オートノミートレーニング研究会

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これまでの研究結果

ハイデルベルク研究の成果より

 グロッサルト=マティチェク氏らがハイデルベルク研究において行った研究は多岐に渡りますが、ここでその一部を紹介します。

がん死亡リスクへの寄与における心理社会的ストレスと身体因子との相乗的交互作用―ハイデルベルク研究
1973-1988 (N = 3,944)

 心理社会的ストレス、遺伝因子、個々の身体的因子のいずれについても、単独ではがん死亡リスクへの寄与は大きくないが、複数の因子が重なると相加効果を超える寄与があり、とくに心理社会的ストレスが加わる場合は相乗的な相互作用が観察されています[1]。

 ここでいう"ストレス"は、グロッサルト理論に基づいて独自に定義され評価されたものです。このストレスを除くことができれば、付随する相互作用効果があわせて除かれ、効率的な予防効果が得られることが期待されます。

グロッサルトの行動類型と健康―ハイデルベルク研究 1973/77-1998 (N = 4,955)

 図は、中高年住民対象者を4つの行動類型(グロッサルトの"タイプI行動"~"タイプIV行動")に分類し(分類不能の対象者は除外)、約14年後の健康状態に関する追跡調査と照合した結果を示しています。タイプI(慢性的な欲求制止が特徴)とタイプII(慢性的な過興奮が特徴)が対象依存型、タイプIVが自律型です。また、タイプIIIはタイプI、II、IVの特性が短期に交代することを特徴とします。タイプIの住民にがん死亡、タイプIIの住民に心血管病死亡が多い一方、タイプIIIとIVは健康維持者が明らかに多く、グロッサルト理論を裏づけています[2]。

"ハイリスク"住民におけるオートノミートレーニングの健康増進効果―ハイデルベルク研究 1975/76-1998

 図は、タイプIまたはIIの特徴を特に強く持つ、対象依存性の高い"ハイリスク者"を対象に行われたランダム化比較試験の結果を示しています。オートノミートレーニングを受けた介入群では、その後12年間のがん・心血管病による死亡が対照群と比べて強く抑制され、また健康を維持した人の割合が明らかに高いことが示されました[2]。

失業者の再就職に関するオートノミートレーニングの効果―ハイデルベルク研究 1975-1985

 図は、失業者を対象に職業訓練プログラム、オートノミートレーニング、あるいは双方を実施し、その10年後に就業状況を追跡調査した結果を示します。職業訓練単独(職業訓練完了の対照群と未完了の対照群を比較)あるいはオートノミートレーニング単独(職業訓練未完了の対照群と介入群を比較)でもある程度効果はみられますが、両者を併用すると再就職率を顕著に高めること(職業訓練完了の介入群と他の3群を比較)が示されています[2]。

文献

  1. Grossarth-Maticek R: Systemische Epidemiologie und präventive Verhaltensmedizin chronischer Erkrankungen. Walter de Gruyter, 1999
  2. グロッサルト=マティチェク R: オートノミートレーニング. 星和書店, 2013
  3. アイゼンク HJ: たばこ・ストレス・性格のどれが健康を害するか―癌と心臓病の有効な予防法を探る―. 星和書店, 1993

独立グループによるグロッサルト理論の検証研究

 欧州や日本での疫学研究によって、グロッサルト行動パターンのうち、タイプIががん罹患の危険因子であること[1-4]、タイプIIが心疾患の危険因子であること[1,5,6]、あるいはタイプIIIががん罹患の予防因子であること[7]が示されています。また、タイプIV類似の概念であるセルフレギュレーションががん患者の良好な予後因子であることをドイツの独立グループが報告しています[8]。

 グロッサルト行動パターンにはタイプV(合理的・反感情的)とタイプVI(反社会的)の2つが後ほど追加されて6類型となりました。このうちタイプVががんの危険因子[2,3,9-11] であることや、がん患者[12]や関節リウマチ患者[13]の不良な予後因子であることが示され、グロッサルト理論を支持しています。このほか、タイプIが慢性肝炎の重症度と関連すること[14]、さらに慢性肝炎患者の予後(肝細胞がん発症、肝炎関連死)因子であること[15]も報告されています。

 オートノミートレーニングを用いた介入研究は追試されていません。国内での若干の応用経験を代表世話人らが報告しましたが[16]、治療者は養成プログラムを経た"認定トレーナー"ではありませんでした。

文献

  1. Schmitz PG: Personality, stress-reactions and disease. Person Individ Diff 13: 683-691, 1992
  2. Fernandez-Ballesteros R, Ruiz MA, Garde S: Emotional expression in healthy women and those with breast cancer. British Journal of Health Psychology 3: 41-50, 1998
  3. 朝枝哲也ほか: 疾病親和性パーソナリティ・テストによる癌発症の予測(9年追跡調査). Cancer Sci 95 suppl: 537, 2004
  4. Kumano H, Haseme E, Fujimoto H, et al: Harmony seeking and the risk of prostate cancer: a prebioptic study. J Psychosom Res 59: 167-174, 2005
  5. Nagano J, Sudo N, Kubo C, Kono S: Lung cancer, myocardial infarction, and the Grossarth-Maticek personality types: a case-control study in Fukuoka, Japan. J Epidemiol 11: 281-287, 2001
  6. Nabi H, Kivimaki M, Zins M, et al: Does personality predict mortality? Results from the GAZEL French prospective cohort study. Int J Epidemiol 37: 386-396, 2008
  7. Nagano J, Kono S, Toyomura K, et al: Personality and colorectal cancer: the Fukuoka colorectal cancer study. Jpn J Clin Oncol 38: 553-561, 2008
  8. Kröz M, Reif M, Büssing A, et al: Does self-regulation and autonomic regulation have an influence on survival in breast and colon carcinoma patients? Results of a prospective outcome study. Health Qual Life Outcomes 9: 85, 2011
  9. Bleiker EM, van der Ploeg HM, Hendriks JH, Ader HJ: Personality factors and breast cancer development: a prospective longitudinal study. J Natl Cancer Inst 88: 1478-1482, 1996
  10. Lehto US, Ojanen M, Dyba T, Aromaa A, Kellokumpu-Lehtinen P: Baseline psychosocial predictors of survival in localised breast cancer. Br J Cancer 94: 1245-1252, 2006
  11. Lemogne C, Consoli SM, Geoffroy-Perez B, et al: Personality and the risk of cancer: a 16-year follow-up study of the GAZEL cohort. Psychosomatic medicine 75: 262-271, 2013
  12. Nagano J, Ichinose Y, Asoh H, Ikeda J, Ohshima A, Sudo N, Kubo C: A prospective Japanese study of the association between personality and the progression of lung cancer. Intern Med 45: 57-63, 2006
  13. Nagano J, Morita T, Taneichi K, et al: Rational/antiemotional behaviors in interpersonal relationships and the functional prognosis of patients with rheumatoid arthritis: a Japanese multicenter, longitudinal study. BioPsychoSocial medicine 8: 8, 2014
  14. Nagano J, Nagase S, Sudo N, Kubo C: Psychosocial stress, personality, and the severity of chronic hepatitis C. Psychosomatics 45: 100-106, 2004
  15. Sawamoto R, Nagano J, Kajiwara E, et al: Inhibition of emotional needs and emotional wellbeing predict disease progression of chronic hepatitis C patients: an 8-year prospective study. Biopsychosoc Med 10:24, 2016
  16. 永野純, 田中浩稔, 須藤信行, 久保千春: 日本人における自主性開発トレーニングAutonomy Trainingの効果:ジストニア患者に対する応用. 心身医40: 159-170, 2000
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